第3回 平成16年(2004年)4月15日掲載

 町の中のタカ・ツミ


 
 

 昨年、木々の緑が少しずつ濃さを増すころ、交通量の多い大通りに沿った神社の森から、「ピョーピョピョピョピョ」という声が聞こえてきました。後の方の「ピョピョ」が少し下がる独特の声です。
 おっ、来たか、と境内に入って行くと、ハトくらいの大きさの鳥が、早く鋭い飛び方で木々の間を駆け抜けます。時には、枝にとまって、黄色の目で人をにらんでいます。
  ツミという名前の小型のタカです。この市街地の神社で繁殖しているのに私が気づいたのは、4年ほど前のこと。それ以来この季節の楽しみのひとつになっています。
  最初に声が聞こえてからしばらくの間は、オスがメスに餌をプレゼントしたり、2羽が鳴き交わしたりして賑やかでしたが、梅雨の時期になると、静かになってしまいました。
 少し関心が薄れていると、ある時、またあの声が聞こえてきました。
 今度は餌を採ってきたオスが、巣の中にいるメスに呼びかける声です。 巣の位置がかなり高い枝の陰なので、離れた位置から観察していれば、人のことは気にしないようです。雛が大きくなって、繁殖中断などの心配が少なくなったのを見計らい、境内に住む宮司さんの家族の方にも、望遠鏡で見てもらいました。
 神社の森も大切な自然の一部であることはすでにご存じだったでしょうが、「こんな所でタカが」と、思いがけない身近な野生のドラマには驚いていました。
 拝殿前で茅の輪くぐりが行われているころ、境内の隅の方では、4羽の雛が盛んに羽ばたきを繰り返していました。
  7月の初め、1羽1羽と、少しずつ巣を離れて近くの枝にとまつたり、また巣に戻ったりしていましたが、いつの間にか姿が見えなくなりました。ひっそりとした巣立ちです。
 今年もその季節が近づいています。


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