第5回  平成16年(2004年)7月8日掲載

 セッカ


 
 

 
この欄、私は今まで、身近な鳥と世界の鳥について交互に書いてきました。海外に出かけて鳥を見ることも好きですが、自宅から自転車で行ける範囲内での鳥見も好きだからです。
 戸田市内の彩湖周辺、さいたま市内の秋ヶ瀬公園、荒川河川敷の大久保農耕地あたりに足を伸ばします。
 ある年の6月末、荒川総合運動公園の近く、土手の上のサイクリング道路を気持ち良く走っていました。
 「ヒッヒッヒッ、チャッチャッチャッ」。セッカという鳥の声が聞こえています。漢字では「雪加」と書きます。その名前に反して夏に行動が目立つ、スズメより小さなかわいい鳥です。よく聞きなれた声ですから、気にしないでいたのですが、あれ、リズムがいつもと違う、と感じました。それと同時に、鳥友Nさんが土手の斜面でカメラを構えているのが見えました。
 鳥を見つけるコツのひとつは、鳥を見ている人を見つけること。というわけで、Nさんのカメラが向いている方向を双眼鏡で探すと、セッカの巣立ち雛たちが、草むらでちらちらしています。まだほとんど飛べない雛たちに、親鳥が時々餌を運んできます。その場所を少しずつ移しながら、土手の反対側に連れて行こうと奮闘中でした。Nさんはさすがにその移動を邪魔しない位置から撮影しています。私も遠くから仲間に入れてもらいました。
 自転車やランナー、散歩する人たちが、土手道を次々と通り過ぎて行きます。足元の小さな鳥たちの大騒ぎに、誰も気づきません。
 やがてセッカの家族は安全な草むらにたどり着き、私には、身近な所での鳥との出会いの記憶が、またひとつ残りました。


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