第18回 平成17年(2005年)11月24日掲載

 ジョウビタキ


 
 
 

 10 月末に、今年もジョウビタキが、北の国から飛んで来ました。
 身近な住宅地のフェンスの上で、ヒッヒッと鳴いてはペコンとお辞儀をし、カカカッと鳴きながら尾を細かく上下に振ります。
 ヒッヒッという声に、ジョウビタキがいるのかと見回すと、少し離れた所の自転車のブレーキ音だったりすることもあります。良く似ているんです。
 オス(=写真)は白い頭に黒い顔、腰から尾にかけての鮮やかな朱色と、翼の白斑が目印です。
 生まれはシベリア地方。日本に飛んで来るのは冬ですから、繁殖の時期ではありません。前にも書いたことがありますが、鳥たちが繁殖の時期に高らかに歌うのを「さえずり」、繁殖時期以外につぶやくように鳴くのを「地鳴き」と言います。つまり、私たちが日本で聴くジョウビタキのヒッヒッ、カカカッという声は、地鳴きです。では、日本でさえずりを聴くことは出来ないのかと言うと、そうとは限らないのです。
 数年前の11 月初め。ある暖かい朝、犬の散歩の途中でした。頭上の電線にとまったジョウビタキが、突然美しい声で鳴き出しました。強いてカタカナで表現すると、ホーヒーチュチュルチュチュンと、歌詞もメロデーも大変複雑な歌でした。数回鳴いて、飛び去りました。  
 しっかり覚えて帰り、後日バイカル湖周辺の鳥の歌声が録音されたテープを聴いてみたら、まさにこの声でした。私はまだ行った事のないシベリアの春の景色を思い浮かべながら、聴き入りました。
 もっと知らない土地に行ってみたい、見たことがないものを見てみたい、新しいことを知りたい、野鳥たちのおかげで、夢や好奇心が絶えることがありません。


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