第26回 平成18年(2006年)9月14日掲載


シロハラクイナ

 

この欄を前回私が担当したのは8月2日。マンション建設工事を一部停止して、コアジサシの子育てを見守る活動についてご紹介しました。おかげ様で、何羽もの幼鳥が親に連れられて飛び立って行き、8月16 日、38 日間に及ぶ保護活動が終わりました。
 実はこの夏、子育てを見守り続けた鳥がもう1種、別にありました。シロハラクイナという鳥です。沖縄に留鳥として分布するこの鳥が、なぜかさいたま市内で発見されたのが6月14 日。埼玉県内では2例目の確認記録でした。その後2羽いることがわかって、粘り強い観察が続けられました。こちらはコアジサシと違って1組だけの、しかもアシ原の中で姿の見えない繁殖行動です。
 抱卵を交代していると思われる行動、雛が孵化したらしく、餌を運び込む行動などを遠くから見守り続け、7月23 日午前11 時40 分、ついに雛5羽が、ころころと黒い毛糸玉のように、アシ原から出てきました。南国の鳥、シロハラクイナの繁殖が、埼玉県内で初めて確認された瞬間でした。 7月26 日に周辺で実施されたラジコンヘリでの農薬散布では、アシ原周辺の散布はしないように配慮をお願いしました。「折角ここに住みついたんだ。大切にしてやろうよ」と快く受け入れてくれた農家の方の潔さは、コアジサシのために工事を一部停止した決断とともに、この夏、私が出会った、ふたつの爽やかな風でした。
 8月27 日、幼鳥は親から離れて単独行動、コオロギなどを捕え丸呑みにし
て、自分だけで大きくなったような顔をしていました。
 9月10 日、シロハラクイナたちはほとんど姿を見せなくなり、モズの高鳴きが聞こえました。


           

 


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