第31回 平成19年(2007年)3月15日掲載



コフウチョウ

 春は野鳥たちの恋の季節です。野鳥たちの場合、配偶者を選ぶ権利は女性にあります。男性は女性に選んでもらうために、それぞれの種類に応じた方法で、歌を歌い、なわばりや巣を作り、独特な飛び方でアピールし、飾り羽で身を飾り、ダンスをします。   
 前にこの欄でご紹介したアオアシカツオドリは、青い足でのユニークダンスでした。世界で最も華麗な踊りを見せるのは、フウチョウ(風鳥)の仲間でしょう。ニューギニアを中心に進化してきた、別名ゴクラクチョウ(極楽鳥)とも呼ばれる鳥たちです。
 数年前、そのフウチョウ類を目当てに、パプアニューギニアの奥地に出かけました。私が経験した海外バードウォッチングの中で、最も撮影が難しい旅でした。テレビでパプアニューギニアの戦士たちが、たくさんの羽で身を飾り、踊っている姿を見たことはありませんか。あの羽がフウチョウ類の羽なのです。つまりフウチョウ類は、昔々から現地の人たちに捕られ続けていたわけです。そのため非常に警戒心が強く、はるか遠くに人の姿を見かけただけで、すぐに逃げてしまいます。
 ある保護区をたずねました。小銃で武装した護衛が同乗した車で何時間も走り、壊れた橋を乗り越え、たどり着いた森の一角に、オスたちの踊り場がありました。数羽のコフウチョウのオス=写真=が、白と黄色の飾り羽を精一杯広げ、何度も何度も踊っています。少し離れた木の上には、興味がある様な、無い様な顔で冷静に見つめている、1羽のメスがいました。自分がフウチョウでなくて良かったと、今でも思います。

 


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