第46回 平成20年(2008年)9月4日掲載


ウォレスクマタカ

 マレーシア領ボルネオ島北部を飛ぶ飛行機から見下ろすと、アブラヤシのプランテーションが広がっていました。原生林は見えません。小さな空港に降りて車で町を抜けたら、もう両側はヤシ畑です。2時間ほどで辿り着いたタビン野生生物保護区はサバ州最大のジャングルですが、ここも一度原生林が伐採された後に再生した二次林です。鳥類、哺乳類など様々な生物が生息し、かつて研究者しか立ち入れない地域でした。今はロッジも整備され、一般の人も泊まれるようになっています。 
 8月末の朝早く、眠い目をこすりながらロッジを出ると、近くの樹上に、ウォレスクマタカ=写真=がいました。マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島などの常緑の森に生きる全長45 センチ、中型の気品あふれるタカです。光る目で、周囲を見回しています。
 ヤシ油を原料とする製品は環境に優しいという人もいますが、プランテーションの拡大が熱帯雨林の減少を招いているのも事実です。単純には割り切れない環境問題の複雑さを思い起こさせて、森の象徴ウォレスクマタカは、やがて力強い羽ばたきで飛び去りました。隣のロッジの人たちはまだ寝ています。

 



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