第68回 平成22年(2010年)7月8日掲載


オナガ

 小さな神社に椅子と三脚を据えのんびりしていたら、聞きなれた声が近づいて来ました。「ギェーイ、ギェーイ」。押しつぶしたような悪声なのに大きく響く、カラス科の鳥オナガ=写真=の声です。ひらりと地面におりて虫をついばみ、飛び去りました。尾が長いから「オナガ」。分りやすい名前です。関東地方平野部に生まれ育った私たちには大変なじみ深く、小さな子供のころ、早い時期にその名を覚えたように思います。
 国内では、本州東半分にのみ生息、北海道と関西以西にはいないというちょっと変わった分布をしていますが、世界的に見ると、もっと不思議な分布です。ユーラシア大陸東端の極東地方(日本、朝鮮半島、中国東部)と、西端のイベリア半島、遠く離れたふたつの地域に分かれているのです。原因として、16 世紀にポルトガル人が極東から持ち帰ったという説と、ユーラシア大陸にかつて連続分布していたが、氷河期に両端だけで生き残ったという説がありました。近年ジブラルタルでオナガの化石が発見され、氷河期生き残り説の証拠であると言われています。
 遺伝子分析が進み、両者を別種と考える説も出ています。子供の頃から見慣れた鳥にも、計り知れない歴史と謎が秘められています。

 



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