第97回 平成25年(2013年)2月21日掲載




アトリ


 寒い冬のある日、さいたま市内、公園の池の端、茂み近くの浅い水辺に、アトリ=写真=が1羽、姿を見せた。周囲を注意深く見まわし、安全を確認してから水の中に降りて、なんと水浴びを始めた。分厚い防寒着で身を覆った私は、言葉もなくそれを見つめる。
 鳥たちにとって羽はいのち。全身の羽を常に清潔ふわふわに保っていないと、飛べなくなるばかりでなく、体温の維持もできなくなる。だから冬でも水浴びをして汚れを落とし、丹念に羽づくろいをする。それを知ってはいるが、冷たくないかと、つい、人間の感覚で心配してしまう。やはり、そう長い間水浴びをしているわけではない。すばやく数回水をはね散らし、飛び去った。
 ほぼスズメ位の大きさ。赤橙色と黒のしゃれたデザインは人気がある。ヨーロッパからアジアのユーラシア北部で繁殖し、冬は南に渡る。日本では冬鳥。かつては数千羽、数万羽の大群が見られたというが、近年は減少している。名前の由来は「集鳥(あつとり)の略」など諸説あるらしい。
 
11 月の本欄で期待した通り、この冬は多くの小鳥たちが訪れてくれた。野鳥の会の全国的情報でも、その傾向が見えている。


 



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