第102回 平成25年(2013年)7月18日掲載




カイツブリ


 住宅、学校、遊歩道にかこまれた池で、カイツブリのヒナが、親に餌をねだっていた=写真=。大きさはもう親と変わらないほどだが、ヒナの特徴である縞模様が残っている。小さいうちは親の背に乗っているかわいらしい姿を見ることもあるが、これだけ大きくなると、もう乗ることはない。親のあとを追って、懸命に泳いでいる。 
 この池には冬の間北の国から渡って来るカモたちがいた。暖かくなるにつれてそれらは北の国に帰り、7月の今、1年中ここにいるカルガモが羽を休めるかたわらで、カイツブリが子育てにいそがしい。大きな鳴き声が「ケレレレ」と水面に響きわたる。
 全長30 a弱。尾はほとんど退化し、丸い体つきでよく潜る。水生昆虫や小魚をくわえて浮き上がる。名前を教えてもらった男の子が「カイブツリ?」ときいていた。少し違うけど、楽しい間違いだ。岸近くに浮かびあがったカイツブリの親を見て「ほら、カモの赤ちゃんがいるよ」とお母さんが幼子に言っていた。これも少し違うけど、心の中でついほほえんでしまう。
 古い名で鳰(にお)と呼ばれ、「鳰の浮巣」「鳰の海(琵琶湖のこと)」などの言葉がある。万葉集にも歌われている。


 



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