第105回 平成25年(2013年)10月31日掲載




ツツドリ


 10 月。さいたま市内の林で、ツツドリの若鳥=写真=が、大きな青虫を捕え、ぐいぐいっと丸呑みにしていた。夏の間に、ここより北のどこかで生まれ育ち、初めて南の遠い国に向かう、旅の途中の一場面だ。
 全長30 a弱。カッコウ科。姿かたちはカッコウによく似ているが、胸の縞模様の太さ、目の虹彩の色などが違う。カッコウと同様に、卵を他の鳥の巣に産みつけ、その巣の主に子育てをさせる。托卵相手はウグイス、メジロ、キビタキなど。この若鳥も、ツツドリ以外の誰かに育てられた。それなのに、本当の親を追って旅をする。そういう生き方しかできないのだから、ヒトの尺度であれこれ言っても意味がない。けれども、何かちょっと言いたくなる。 
 鳴き声が、筒口をたたいた「ポポポ」という音に似ていることから、この名がついた。山地の森林で繁殖し、その声は近くで聞いてそれほど大きくなくても、遠くまでよく通る。緑濃い山道でどこからか聞こえてくると、周辺空間の深さを想い、そういう場所を歩けることに感謝する。
 春と秋に平野部の林などに立ち寄る時は、ほとんど鳴かない。ひっそりと、私たちの傍らを通り過ぎて行く。 

 



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