第115回 平成26年(2014年)9月18日掲載




キリアイ


   秋の水辺を歩くシギ。あまり目立つ特徴はないが、目の上の白っぽい線2本(眉斑と頭側線)が、前の方でつながっているように見えるきっぱりとした顔。キリアイ=写真=だ。
  「え? 斬り合い?」、いや、そんな物騒な名前ではなく、漢字で書くと「錐合」。「錐」は大工道具の「きり」だが、「錐が合う」? 意味がよく分からない。山と渓谷社の『山渓名前図鑑野鳥の名前』でも、「2本の線が接している様がきりの先端が合っているように見えるからか」などと説明を試みているが、結局は「この不思議な名前の意味も起源も明らかではない」と投げ出している。
 シベリア北部など数ヵ所の繁殖地があり、冬はアフリカ東海岸、中東、インド、東南アジアなどに渡る。日本には数少ない旅鳥として春と秋に立ち寄る。埼玉県には、2年の間隔で来たこともあれば、10 数年間来なかったこともある。不規則に飛来するが、私の手元の資料によるとほとんどが秋。春の記録は1回しかない。
 人をあまりおそれない。比較的近くで観察できる。全長約16 a。涼しさを増し、落ち着いた陽射しの中で、他のシギなどと斬り合いもせず、水辺で忙しく餌を探しながら、少しずつ私の方に近づいて来る。今年の秋は、そんな充実した出会いに、まだ恵まれていない。

 




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