第116回 平成26年(2014年)10月16日掲載




ホオアカ


 10月は、冬鳥が次々と姿を見せる季節。埼玉県平野部では、冬はいなくなる夏鳥より、冬になると渡って来る冬鳥の方が、数も種類も多い。しかも、木々の葉が落ちて視界が開け、鳥たちも見やすくなる。だから、バードウォッチャーたちには、楽しみな日が続く。
 ところが、飛来しても、なかなか姿を見せない鳥もいる。ホオアカ=写真=がそのひとつ。夏の間は本州の高原などにいる。目立つ所で胸を張り、高らかにさえずり続ける。ところが冬、平地に降りて来ると、草地のやぶの中に入り込んで小さく「チッ、チッ」と鳴くだけ。時々そっとやぶの上に姿を見せる。やたら元気な夏とひどく内気な冬。かなりの差がある。県内の平地で観察される数は少ない。
 ホオジロの仲間。頬のように見える部分が赤褐色であることから、「頬赤」と呼ばれる。胸に黒い縦斑が並び、その下を赤褐色の横帯が縁取る。冬にはそれらの色も薄くなる。
 ある年の冬、「ここのホオアカは午後4時に出る」と、教えてくれた人がいた。ふと気がつくと枯草の上にいて、しばらくあたりを見回し、またやぶに戻った。時計を見たら、本当に4時少し過ぎだった。その後、時間になるとあちこちの枯れた草原を見渡しているが、こんなに時間厳守のホオアカに、再び会ったことはない。

 




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