第125回 平成27年(2015年)9月5日掲載




キガシラシトド


 7月。アラスカに出かけた。主な目的はヒグマの撮影だが、ほかの動物や鳥との出会いにも恵まれた。
 草原で、巣材や餌をくわえて忙しく飛び回っている鳥たちの中に、見覚えのある鳥、キガシラシトド=写真=がいた。「シトド」は、ホオジロ類の古名。つまり頭が黄色のホオジロ類という名前。頭央部の黄色が目立つ。夏はアラスカやカナダ西部で過ごし、冬はアメリカ西部やメキシコ北部に移動する。
 普通日本には渡って来ない。まれに迷って飛んで来るが、日本鳥学会の目録にも、過去10例ほどの記録があるだけ。埼玉県では、2011年4月に川口市内の見沼たんぼで見つかり、2週間近く滞在したことがある。その時のことは、同年5月26日の本欄で紹介した。  当然ながら、本来の生息地で子育て中のキガシラシトドは、迷って冬の日本にいたそれより、生気と存在感にあふれ、いるべきところにいる落ちつきと、輝きをみせていた。見沼たんぼで会ったあの鳥も、どこかの生まれ故郷に帰り、同じように輝いているだろうか。多分、むずかしかったろうなと考えながら、シャッターを押した。
 9月。アンカレッジの平均最低気温は、5度近くに下がる。秋は短い。大地が雪と氷に覆われる日が近づく。草原や水辺、林などで子育てをしていたあのたくさんの鳥たちは、南を目指して、次々と飛び立ったはず。小さな鳥たちの命がけの旅が続いている。

 




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