第131回 平成28年(2016年)4月23日掲載




キジバト


  会事務局に、一般の男性の方から「キジバトが一日中鳴いていて、うるさくて仕方がない」と電話がかかってきた。一瞬言葉につまったが、ここでキジバトに代わって話をできるのは、私だけだ。普段の短気をおさえていろいろ話しているうちに、繁殖期のある時季、「デデッポーポー」と鳴き続けることがあるが、それほど長い期間続くわけではないというあたりから、会話がかみあうようになった。更に、それをうるさいと感じる方もいるかもしれないが、のどかないい声だと喜ぶ方もいると話を進めると、だいぶ言葉が柔らかくなってきて、最後には笑って受話器を置くことができた。ほっ。
 キジバトはユーラシア大陸にも広く分布している。日本ではかつて標高1500mほどの山地の林に棲み、ヤマバトとも呼ばれていた。平地では、冬に山地から降りて来るのを見るだけだったが、1960年代から市街地で繁殖するものが出始め、80年代には繁華街の街路樹などでも営巣するようになった。今では1年中身近に見ることができる。
 近年野鳥と人との距離がずいぶん近くなったように感じる。キジバトはその代表格と言うか、自転車で踏んでしまいそうに近づいても飛ばないので、ブレーキをかけてよけたりしている。
 歌人斎藤茂吉の歌に「ほのかなる草(あけび)の花の散るやまに啼く山鳩のこゑの寂しさ」とあるという。鳥の声を騒音と感じていらだつか、耳を傾け楽しむか、そこが問題だ。

 




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